模索期(1975~1982)、隆盛期(1983~1989)、爛熟期(1990~1995)の3章に期間を区切って、50件近くのポストモダン建築を選び、イラストと写真を交えて紹介している。白井晟一の懐霄(かいしょ)館から始まり、作品の選択がとてもよい。著者の磯達雄さんはもと「日経アーキテクチュア」の記者。

巻末に著者と建築家隈研吾の対談がある。隈氏は、日本のポストモダンには二面性があったと説明する。それがモダニズムと比べてわかりにくさを生んだという。ひとつは「場所性」の復活。モダニズムのグローバリズムに対する場所の固有性を再発見しようというムーブメントだ。もうひとつは「パン・アメリカニズム(汎米主義)」。ギリシャ・ローマ以来の非場所性を基本とする古典主義建築を、アメリカの場所性として抽出した。日本にはアメリカからポストモダンが入ってきたため、アメリカ発の新しいグローバリズムを受け入れさせられたという側面がある。この2つのどちらが強くでるかで、作品にバラツキがでたと見る。彼は「日本のポストモダン」にあった緊張感を評価している。

『(日本のポストモダンは)、道化性を引きずると、こっちの崖に落ちちゃう、正当性を引きずると、こっちの崖に落ちちゃう、という綱渡りの時代だった。この時代はいろいろな建築の方法論を極限まで引っ張って試している。成功例も失敗例も、すべてのサンプルがある。僕(隈)の今のスタンスは、この時代を並走したからこそ見えてきたものです。・・建築というのは、それが社会とどういう関係を切り結んだかが表れる。小説もそういうところが面白いわけで、日本のポストモダンの20年間は、そんな文学的な楽しみ方ができる時代です。ヨーロッパでいえばコルビジェやミースファンデル・ローエが生きた戦争前後の時代もそうですね。ヴァレリーはそれを「精神の危機」の時代と呼んだ。社会に対して建築家がどう戦ったかというドキュメンタリーとして、ポスト・モダンの時代を見て欲しい。』

コメント

nophoto
Andaz
2014年7月2日22:48

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